畳大もある棟方志功の版木がホワイトボード前に置いてある。
なんとなく思いつきで、手近にあったインク4色で多色刷りを試みる。
刷り上がりは上手くいったが、はて、版木に付いたインクが取れやしない。
元々朱一色だった版木が青や黄で斑になってしまい、
ああどうしよう。オレはなんてバカなんだ。
取り返しのつかない事をしてしまった。
溶剤もないので、ティッシュでシコシコ拭い取るのだが、
木版に染込んだ色は取れるはずもなく、途方に暮れる。
逃げるように別の教室に移り、
クラスの女性と机を挟み他愛もない話しをする。
たしか、以前この人を好きだった記憶があるのだが、
何故だかその理由が思い当たらない。
ただ好きだった記憶だけが靄の様に心に揺らめいている。
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