「ねないこだれだ」のせなけいこさんが亡くなられたそうだ。
実はせな先生とは何度かお会いした事がある。
一緒に飲んで、足元がおぼつかなくなった先生を新宿駅まで送った事も二度ほどある。
始めてお会いしたのはある団体の会合で、僕の隣に座られた小柄なせなさんは、ベレー帽に革ジャンといういで立ちで、「あなた学生さん?」と僕に問われたのであった。その時僕はもう35位だったと思うが。
そして駅までお送りした事があるにも関わらず、いつまで経っても「あなた…学生?」と僕の事を認識してくれなかったのだが、酒が入って昔話に話が咲くと、
「あたしは武井武夫の末弟子でね。『せなは絵はダメだけど飲みっぷりだけはいい』と兄弟子に言われてね。」などと話してくれたものだ。
いつだったかそんな飲みの席でたまたま手元にフィルムカメラがあって、一緒に撮ってもらった事があったのだが、現像するのが億劫で引き出しにフィルムを入れて置いたらそのまま何処かへいってしまった。
子弟制度の最後の生き証人で、物事に頓着しない飄々とした画家風ないで立ちといい、僕個人としては在り方が最も絵本作家らしい人であったと思う。
ご冥福をお祈りする。
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